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【交通】ベトナムの電車事情

電車が走ったのはわずか2年前

日本企業も多く参画するホーチミン地下鉄プロジェクト(写真:Kaisei)

 

ベトナムで初めて電車が開通したのは、わずか2年前の2021年のことである。
首都ハノイの中心地を走るハノイ都市鉄道は現在、カットリン駅からイエンギア駅を結ぶ1路線12駅(2A線)が運行中で、ハノイの中心部の北部に位置するバクトゥリエム区から人気の観光スポットホアンキエム湖までを結ぶ路線(3号線)も現在建設中だ。
 
2010年にフランスの鉄道関連会社によって工事が開始した2A線は当初、2019年の開業を目指していたが、政府による土地収容の手続きの遅れなどにより建設計画が大幅に伸びた背景があった。また、この大規模な国家プロジェクトは、韓国やイタリアなど世界各国の建設会社や機械メーカーなども多く携わっており、工期の遅れによる賠償問題も大きな話題となった。
 
度重なるトラブルを経て開通した当初こそは、物珍しさにSNSに投稿する用の写真や動画を撮るために乗車する若者も多かったが、世帯あたりのバイク所有率が86%のベトナムでは移動手段として電車を利用する人はまだ多くないのが現状で、1日あたりの平均利用者数は平日が3万2000人で、東京のJR山手線が3181万人に比べると歴然である。
 
バイクによる交通渋滞や大気汚染により、政府も市内へのバイクの乗り入れを制限する案も浮上しているが、交通インフラがまだ整っていないベトナムでは反対の声も多く、電車を利用する人が増えるのはまだ時間がかかりそうだ。
 
また、国内随一の経済都市ホーチミン市でさえ、2012年に着工した工事が当初の2018年の運行開始計画から大幅に遅れており、2024年の春頃に開通との報道があるが、これまで繰り返し延期を目の当たりにしてきた市民の関心度は低い。
 
そんな課題だらけのベトナムの電車事情であるが、すでに北部ハノイと南部ホーチミンを結ぶ南北高速鉄道の計画もあり、まさに経済発展途上にあるこの国の成長を目の当たりにする楽しさがここにはあると感じる。
 

ベトナムを縦断する南北統一鉄道

テト(旧暦の正月)の時期に帰省する人々で混雑する駅(写真;Kaisei)(写真:Kaisei)
ベトナムは同じASEANのタイやマレーシアに比べてもインフラの整備がまだまだ追いついていないが、今からおよそ90年前の1936年には、ベトナム南北を縦断する鉄道が走り始めていた。
 
その鉄道は現在でもベトナム鉄道公社により運行されており、北部ハノイから南部ホーチミン市まで結ぶ営業距離2600km路線は、ベトナムがかつて南北に分断されていた歴史から「南北統一鉄道」と親しみを込めて呼ばれている。
 
白と赤のボディーに赤のラインが入った特徴的な車両は、ほとんどが東ヨーロッパ製のディーゼル機関車で、先述した南北高速鉄道がいわゆる新幹線ということだ。
 
ハノイ都市鉄道のように、市内の移動に使われる交通機関ではなく、近くても隣の省までを移動する際に使われる長距離列車である。車内には食堂車があり、完全個室にベッドがある寝台車や、ソファータイプから木製ベンチまでさまざまなグレードがある。
 
ベトナムの旧暦の正月時期になると、普段は都市部に出稼ぎに来ている労働者や学生たちが一斉に地方へ帰省するため、駅や車内は大きな荷物を持った人たちで混雑する。乗車代もそれほど高くはなく、ベトナムでの鉄道旅については他の記事で紹介する。