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【翻訳記事】リスクを負う不法就労者

記事:2022年9月6日|午後5時3分(PT)

台湾で不法就労をするミン・トゥアンさんは、逮捕と国外退去を恐れて病院に行ったことがない。

 

ミンさんは、捕まってベトナムに送還されると、台湾で仕事するための2年間の仲介手数料として労働派遣会社に約115万円を払うために借りたお金を返済できないのではないかと心配している。

 

当時彼が望んでいたのは、借金を返済するためにできるだけ多くの残業をすることだけであった。しかし、新型コロナウイルスの影響と残業をさせてもらえなかったことから、彼の収入は激減した。

 

その間、毎月の基本給約11万円から、約7万円で食費や寮費、仲介手数料や保険料、生活費などを賄い、残りの約4万円で過ごして家族に送金をしなければならなかった。

 

その賃金は「母国で残業をした場合の給料よりもさらに低く」、もし困ったことになった場合に頼りになるボーナスや他の財政的支援も受けていないという。

 

彼は非常に不幸で、契約社員をやめて不法就労者になった自分の将来を心配している。食費と家賃だけを支払うだけで、保険料や仲介手数料はない思っていた。

 

彼は入国管理局に勾留や送還されることを常に心配している。政府が不法移民の取り締まりを強化していることから、その恐怖は悪化している。

 

トゥアンさんは、在留許可が与えられた合法的な会社よりも非合法な仕事のほうがよりお金を稼ぐことができるため、海外で不法就労するベトナム人の一人となった。

 

2022年7月21日、ハノイでの説明会に参加する韓国で働く予定のベトナム人労働者たち(写真:VnExpress/ホン・チェウ)

 

事実、この問題は長い間注目されてきた。

 

公安省が6月に発表した声明によると、2018年以来、海外に住む2万5千人以上のベトナム人が現地の法律に違反して強制送還されているという。

 

ルオン・タム・クアン公安省副大臣は「海外のベトナム人は、(他国で)当局の不法就労撲滅キャンペーンで主な調査対象になっている」と述べている。

 

8月19日、韓国法務部は過去2か月間で642人の不法就労外国人を逮捕し、うち49人がベトナム人であった。

 

日本でも同様に、多くのベトナム人が地方に雲隠れしているといわれている。日経アジアは7月の記事で、不法就労を目的とした失踪者は7,167件報告され、60%以上がベトナムからの実習生であると掲載した。

 

詳細の統計はないが、数千人のベトナム人が台湾や日本、韓国やタイ、アメリカやヨーロッパなどで不法就労していると考えられている。

 

合法的に働いている外国人労働者数は約60万人である。

 

タインホア省ベトナム労働・傷病兵・社会問題省によると、3万2千人を超える人たちが海外で働いており、多くの労働者が在留期限を超えて違法に仕事を探しているという。

 

実際、韓国で働くために同地域からの6千人の労働者のうち890人が不法滞在であると同省は述べている。

 

見返りは大きいが、当局に捕まるリスクもあり、不法滞在者アンダーグラウンドな環境で生活し、逮捕と送還を回避するため人目を避けている。

 

フック・ドアンさんはトゥアンさんと同様、一年以上前に不法就労者になって以来、入管当局に見つかるのではないかという恐怖の中で生活している。

 

午前5時頃に仕事を終えたあと、地元のスーパーマーケットで食料品の買い出しをしてから午前6時頃にまっすぐ家に帰る。

 

彼によると、もし路上で警察から声を掛けられた場合はカラオケやレストランでお酒を飲んで酔ったふりをするだろうし、質問攻めにされ在留許可書を提示するように求められた場合には逃げるだけだという。

 

「自分は出かけることができないので、家でご飯を食べなくてはいけない」と彼は説明した。また、週末に買い出しに行ってから、あらかじめ調理した料理を冷蔵庫に保存するという。

 

政府による不法就労者の捜査と、入管当局による家宅捜査が職と住居を探すのをより困難にしている。

 

4年前に韓国で観光ビザの期限を超えて滞在したラム・チョンさんによると、当局は不法移民を探し出すため「いつでも」「どこでも」建設現場に警察官を送り込むので、仕事を見つけるのを難しくしているという。

 

彼が働いていた現場に警察官が押し寄せてきて、その時まさに働いていた不法就労者たちを捕まえるために現場を綿密に捜索した当時のことを振り返った。

 

「みんなが「警察だ!」と叫び、四方八方に逃げました。」

 

上層階で働いていた人たちは急いで階下に逃げ込み、押し合いながら現場から出ていったという。

 

「逃げようとして多くの人が負傷したり死亡したりしているので、建設現場は危険なところなのです。」

 

最悪の場合、彼は仕事を辞めて他の仕事を探さなくてはならないが、彼が働いた日数分の給料が受け取れない可能性がある。

 

また、彼は自分と同じ不法就労者たちは、必要に応じて素早く簡単に逃げられるよう半地下のアパートに住むのを好むという。上の階に住んでいる人たちは窓がある部屋を探すことが多いと語った。

 

もし逃げることになれば、大家に払った保証金を失うことになる。

 

この国で不法に働く人たちには、常に顔を隠し、病院には近づかないという2つの慣行に従うことが求められる。

 

チョンさんはマスクと帽子で顔を完全に隠すという。

 

「誰かと接することはほとんどなく、常に周囲を確認していつも警戒しています。」

 

不法就労者たちは大きな病気をした時でさえも、身元を聞かれることを恐れて病院に行くことをためらっているという。そのため彼らは自分で病気を治すために薬局で薬やメディカルハーブを買いだめすると語った。

 

厳しい現実

しかし、常にリスクと隣り合わせに肩身狭く生活しているのにもかかわらず、ベトナム人たちは、非契約労働者としてより多くのお金を稼ぐことができるため、母国に送金するという彼らの運命を受け入れている。

 

労働・傷病兵・社会問題省によると、ベトナムにとって日本と韓国は主要な労働力の輸出市場で、ベトナム人の契約労働者はそれぞれ約16万円―19万円、19万円―約24万円の収入がある。

 

韓国の雇用主は、不法労働者が高い収入を得られている間は契約や保険の手続きの必要がないため、彼らを雇いたがるという。

 

2022年8月、日本のレストランで働くバオ・ロンさん。(写真:VnExpress/ハイ・ビン)

 

トゥアンさんと同様のバオ・ロンさんは、より良い生活を求めて他の国に行くことを望んでいた。2019年、彼はエアコンの取り付を専門に行う日本の会社で働くため、仲介業者に約75万円払った。1日8時間労働で、残業代を除いた月額の給料が約15万円であった。

 

入社してら2か月目、労働時間は増えたが給料は増えなかった。

 

ゲ・アン省出身の25歳男性は「もしマニュアル通りにできなければ、毎日のように脅されていた」と述べた。

 

2週間もしないうちに彼と2人のベトナム人の同僚たちは他の仕事を探すために会社を去り、食品加工会社に応募した。ロンさんは配送担当として雇われ、月額約40万円あった。

 

彼は3年近く不法移民の状態で、4つの仕事を掛け持ちしている。借金はすべて返済し、約300万円の貯金ができた。

タインホア省のレ・タイン・トゥン労働副長官は、8月中旬に同省で開かれた海外への人材派遣に関する協議会の中で、韓国の比較的高い賃金は、出稼ぎ労働者が不法滞在や契約に違反する理由であると述べた。

 

ベトナムで受け取る給料の7〜10倍になることもあるが、彼らが帰国しても同じ条件の仕事を探すことができないという。

 

見えない終わり

意欲的な外国人労働者の多くは地方出身で、貯蓄があまりないため大手の送出機関に仲介料を払うためにお金を借りなければならない。その借金を返済するためにできるだけ早く多く稼がなければいけないことが彼らのプレッシャーになっている。

 

日本の出入国在留管理庁が2021年12月から2022年4月にかけて約2,100人の実習生を対象に行った調査によると、多くのベトナム人が日本に行くために多額の仲介料を払わなければならなかったことが明らかになった。

 

ベトナムの人材仲介業者は、フィリピンの9万4千円と比較して、平均68万8千円を受け取っていることが調査でわかった。また、55%の人が仲介料を支払うためにお金を借りなければならず、そのうち80%の人が平均67万4千円を借りるという。

 

ベトナム国際労働機関のイングリッド・クリステンセン理事によると、ベトナム人労働者たちは初めての海外で仕事につくために平均82万5千円、もしくは8か月分の給料相当額を支払わなければならないと協議会で述べた。多くのベトナム人が、借金が増えるのを避けるために不法就労を強いられていると指摘した。

 

この問題が懸念されるようになったことで、ベトナム政府は労働者たちが海外で不法滞在や不法就労することを防ぐための取り組みを強化している。

 

2017年、ハノイで行われた韓国に行くための語学試験の前に手荷物検査を受ける労働者たち。(写真:VnExpress/ジャン・フイ)

 

労働・傷病兵・社会問題省は7月、ハティン省ゲアン省ハイズオン省タインホア省の4省8地区で雇用許可制に基づく韓国への労働者の募集を中止した。

 

これは、該当地域からの労働者の27%以上が期限内に帰国できなかったことや契約違反が発生したことを受けての措置である。

 

しかし、この問題に終わりが見える気配はなく、当局は不法就労者に帰国するよう説得するのに苦労しているという。

 

トゥン副長官は「このような行為を罰する規定があるが、[犯罪者たち]は国外にいるため、当局は何もすることができない」と述べた。

 

多くの国が、不法滞在している外国人を強制送還する取り組みを強化している。

 

チョンさんは、海外でより高い給料を得るために、青春や健康、幸せを諦めても構わないと主張する。

 

「ここには肉体労働も多いですが、ベトナムに帰国するよりも給料がいいです。」

 

「諦めないといけないこともありますが、家族のために喜んで働きます。」

 

原文:

e.vnexpress.net