記事:ホアン・リー、ホアン・ハイ|2022年9月2日午前8時7分(ハノイ)
自殺を試みた経験があるゲイの男性は「LGBTQ+の子を持つ親として家族みんなの幸せを願うなら、考え方を変えなくてはならない」と母親にそう言った。
ホーチミン市在住の女性、グェン・ラン・モンさんは、LGBTQ+の子を受け入れるために心理的な戦いに直面している人たちへアドバイスをしている。
彼女は2011年に設立されたPFLAGベトナム(LGBTQ+の両親、家族、友人)のリーダーである。
モンさんは毎週のように、LGBTQ+の子どもを持つ親などから支援を求める電話やメールが届きます。
たいてい彼らはまず子どもたちを「普通」にしようと試みる。
彼女の話や知識を共有することで、彼らの子どもが何も間違えておらず、LGBTQ+の子どもを持つことは何も恥ずかしいことでないことを示している。
彼女は「多くの親たちはこのコミュニティを理解しておらず、LGBTQ+に対して深い偏見を持っています。自分の子どもたちのことをもっと知ろうとするとき、自分の偏見をなくし彼らにとって最も簡単な方法で子どもたちを受け入れるでしょう。子どもたちにとってそれは最も大切なことです。」と述べた。
モンさんの親たちへのアドバイスは、11年前にゲイの息子を受け入れる際の彼女自身の葛藤からきている。
当初、現在29歳になった息子が異性愛者でないことを信じることができず、彼がゲイの友達の真似をしていることを叱っていた。母と子の関係は悪化と緊張の一途をたどったという。
そんなある日、息子が自殺を図ったことを知り、それがきっかけで彼女は目覚めた。
「精神が乱れた。そのように息子を扱い続けることはできないと思った。」
それから彼女はLGBTQ+について学び始め、思っていたほど彼らが「悪くて規律がない」わけではないことに気づいた。
「彼がありのまま幸せに生きてくれたら、私も幸せです。」
モンと彼女の息子の物語は、現代ベトナム社会がLGBTQ+コミュニティを受け入れて進歩した典型的で心温まるストーリーである。
今月初め、保健省は各地方自治体の保健省に通知を送り、政府のウェブサイトに掲載した。LGBTQ+であることは「一切の病気ではない」とし、「『治す』ことも『治す』必要もなく、決して変えることはできない」との見解を示した。
同省は、医療の専門家はLGBTQ+の人たちの「治療を妨害したり強制したり」してはならないと述べている。LGBTQ+の人たちが支援を受けられるなら、「それは心理的援助の形でなければならず、性同一性の知識を持った専門家が行う必要がある。」と示した。
医療の専門家はLGBTQ+の人たちに敬意と差別意識なく対応するべきである、と述べている。
8月24日に発行されたイギリスの新聞ガーディアンの記事の中で、この発表は同性愛者の権利の「勝利」であると取り上げられた。
トランスジェンダー法は、出産給付金の受給と彼らの性同一性に応じた結婚の権利を人々に与えることを要求している。
したがって、妊娠して子どもを出産したトランスジェンダーの男性は通常の出産給付金を受け取る権利が与えられ、トランスジェンダーとして認められると法律と憲法に従って他すべての権利を得ることができる、と専門家は先週に開かれたトランスジェンダー法草案に関する会議で語った。
この進歩は政府レベルだけでなく、民間レベルでも行われている。
今月初め、社会経済環境研究所(iSEE)とICSセンター(LGBTQ+の権利を擁護するハノイの団体)は「Toi dong y」と呼ばれる(大まかな訳:私は同意する)キャンペーンを打ち出した。
同性婚を認める法案を求める25万人の署名を集めることを目標とした。
同キャンペーンは芸能や芸術、ジャーナリズムやスポーツなどさまざまな分野の著名人の支援を受けながら、72時間で100万人の署名を集めることができたことを公式Facebookアカウントで報告した。
10年前に行われた同様のキャンペーンでは1万2千の署名に留まった。
iSEEのルオン・テ・フイ理事は、今回のキャンペーンはこれまでのすべての記録を破り、ベトナム社会が10年でどれだけ進歩したのかを示していると語っている。
VnExpressが7月に行なった調査では、2,700人を超える回答者の61%が自分の子どもが幸せであるかぎり彼らの性思考を喜んで受け入れると答えている。25%がショックで困惑するがまだ受け入れており、生まれた時と異なる性の受け入れを拒否していると回答したのはわずか14%であった。
ホーチミン市にある社会生活研究所が2017年に行なった調査では、15歳から35歳の回答者の50.9%が、ベトナムは同性婚を受け入れるべきであることに賛成していることがわかり、26.3%が同性婚にためらいを感じ、反対したのはわずか22.8%であった。
社会生活研究所理事のグェン・ドゥック・ロック准教授は、他の東南アジア諸国と比べると、ベトナムは比較的LGBTQ+コミュニティにオープンで、反対の意見は主にLGBTQ+の家族の中で起きると述べている。
ベトナムのLGBTQ+コミュニティに対する偏見
しかし、進歩したにもかかわらず、未だLGBTQ+コミュニティはスティグマと差別に苦しんでいる。
保健省によると、ベトナムに48万人のトランスジェンダーの人たちがいると推定されるが、公表していない人が多くいるため実際はもっと多いという。
トランスジェンダーの人たちは、彼らの家族や学校、職場や医療施設などからスティグマや偏見、差別に直面している、
保健省の調査では、回答したLGBTQ+の40%近くが自殺を試みたことがあることがわっかった。
トランスジェンダーの3人に1人が過去12か月で差別や偏見にあった。
スティグマと差別に対する当然の恐怖もまた、彼らが病気になったときにヘルスケア関連の情報とサービスを求めることを妨げている。
彼らの18%がHIVと梅毒に感染しており、4%の人がこれまでにHIVテストを受けたことがなく、42%がうつ病にかかっていると報告している。
iSEEがコミュニティの2,362人を対象に2015年に実施した調査によると、5人に1人が「治療」のために医師の診察を受け、さらに60%以上が外見や行動を変えることを余儀なくされ、心理的な圧に直面していることがわかった。
ハノイ在住でトランスジェンダー女性のリンさん(24)は、これらすべてに直面した。
彼女が女性のような服を着ているのを父が知ったとき、父は怒り狂い、彼女の服をすべて捨てたという。父はリンさんを精神科医の診察を受けさせるためにバック・マイ病院に連れて行き、さらに彼女が「再び異性愛者」になることができるように兵役することを強制されたという。
その数ヶ月後、彼女は両親に悪魔祓いに連れて行かれたと、リンさんは語った。
ハノイ在住でベズビアンのジャンさん(27)は、「私の母は私がレズビアンであることに気づいたとき、母は私の前にひざまずいて『ノーマル』になることを懇願されました」と当時を振り返った。彼女は、私が泥棒か薬物中毒者と結婚しているほうが簡単だと述べた。
ICSセンターでLGBTQ+活動家兼共同創設者のフィン・ミン・タオさんは、LGBTQ+の人たちの多くが自分たちの家族からひどく扱われている。彼らの両親は精神医学的治療と厄払いを通して自分の子どもたちを「治療」しようとしている、と語っている。
「こうした家族の態度や行動は彼らを孤独に感じさせ、多くのLGBTQ+が家を出て行きます。」
モンさんによると、息子は彼氏と3年間幸せに暮らしているが、今でも彼らが差別を受けているのではないかと心配していると語っている。
ロックさんは、「社会は脆弱なグループの権利としてではなく、人権の観点からこれらの問題を検討する必要がある」と述べている。
【翻訳編集】Hải Tình
原文: